山形県庄内町で米作りに励む阿部勝吉さん。機械で測定するのではなくヒトが美味しいと感じるかどうかで勝負するというところに意義を感じ、「第19回あなたが選ぶ日本一美味しい米コンテスト」に参加したとのこと。阿部さんが出品する「ひとめぼれ」が見事、メジャー部門優良金賞に入賞を果たしました。今回は阿部さんに、米作りへの並々ならぬこだわりや、今後の農業への想いなどを伺いました。

コンテスト出品のきっかけと、受賞の感想をお聞かせください。

地元庄内町で開催されるコンテストだからこそ、出品しようと思ったのがきっかけです。 全国の500軒の農家が3合ずつ米を5袋に入れ出品し、全国の500軒の審査員家族が全国各地の米5袋を食べて美味しい順に点数を付けます。 我が家も審査員を務めています。我が家の米を基準に審査を行いますが自慢の米ばかりなので、順位を付けるのは大変な作業です。 審査基準は極めて厳しく、満点はおろか、審査員の半数以上に高く評価されないと決勝には進めません。 だからこそ、全国の美味しいお米の中で、自分の作った米が「美味しい」と評価されたことは本当に嬉しかったです。 昨年の米は、夜が涼しく雨も降ったおかげで、品質と収量のバランスが良い最高の出来栄えでした。 今は気候変動もあり、「つや姫」など特定の品種を作っていれば安心という時代ではありません。 コンテストは、自分のお米の立ち位置を知り、より美味しいお米を作るための試金石として重要な役割を果たしています。

米作りにおけるこだわりや、苦労されている点を教えてください。

一番のこだわりは「土づくり」です。 良い米を作るためには、根を大事に育てることが最優先です。 秋と春の2回に分けて完熟堆肥や土壌改良剤を散布し、稲が自ら養分を吸収できるよう根を強くしています。 経営上は収量を上げたい思いもありますが、肥料を多く与えすぎるとタンパク質が増えて食味が落ちてしまうため、肥料に頼りすぎない土壌づくりを意識しています。 苦労するのは水管理ですね。 夏の暑い時期に、水の出し入れだけで1日3時間半もかかることがあります。 また、庄内地域は風が強いので、水管理に注意が必要です。 しかし一方で、海風が常に空気を動かしてくれるため、稲が揺れて下部まで光が届きやすく、光合成にとても良い環境でもあります。 この恵まれた環境を活かし、品種ごとの特性を視覚的に観察しながら、日々のきめ細やかな管理を徹底しています。

農業の面白さや、これからの夢について教えてください。

何より、食べてくれた人に「美味しい」と言ってもらえることが一番の喜びです。 そして、夕日に染まる黄金色の田んぼや、赤とんぼが飛ぶ風景など、日本の原風景を守っていけることも農業の大きな魅力だと感じています。 現在、地域内の農家数は大きく減少し、数年後にはさらに深刻な状況が予想されます。 若い人が農業に参入するには機械コストなどのハードルが高いため、自治体とも協力しながらレンタル制度や就農支援を進めていく必要があります。 私自身は米作りの合間にトルコキキョウなどの花の栽培も行い、経営の多角化を図っていますが、今後も農業を次世代へ繋ぐための環境づくりに貢献していきたいです。

おすすめの食べ方や、今年の生育状況を教えてください。

塩むすびが一番、お米ごとの美味しさを実感できますね。 普段は卵かけご飯や、しらすバターご飯など、シンプルに味わうのが好きです。 今年の稲は順調に育っており、このまま台風などの影響がなければ、収量も品質も良い美味しいお米をお届けできると思います。

消費者の皆さまへ

日頃から庄内のお米をご愛顧いただき、本当にありがとうございます。私たち生産者は、美味しいお米を皆様に届けたいという一心で、暑い日も泥まみれになりながら田んぼと向き合っています。 肥料に頼るのではなく、土づくりから徹底してこだわり、丹精込めて育てたお米には、庄内の自然の恵みと私たちの情熱が詰まっています。 ぜひ、おにぎりや卵かけご飯などで、素材本来の豊かな味わいを楽しんでみてください。 これからも、全国の食卓へ最高の笑顔をお届けできるよう、誇りを持って米作りに励んでまいります。